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政策の記事

「脱原発ロードマップを考える会」発足

12日、民主党の議員連盟である「脱原発ロードマップを考える会」が第一回総会を開催し、設立された。この議連は、脱原発に向けてのロードマップ(廃炉目標、省エネ目標、再生可能エネルギー目標、投資•雇用目標等を含む)を策定し、脱原発を早期に実現することを目的としている。

この議連は、民主党の衆議院議員39名、参議院議員16名の55名が呼びかけ人となり、その他にも衆議院議員12名、参議院議員4名の16名が当日までに入会した。顧問に菅直人前総理、江田五月元参議院議長が就任した。世話人の中から、近藤昭一衆議院議員が会長、平岡秀夫衆議院議員が事務局長、福山哲郎参議院議員が幹事長に就任した。総会議事の後、NPO法人環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏が設立記念講演を行った。

脱原発ドードマップを考える会 第1回総会の様子

デンマーク新政権、2050に再生可能エネルギー100%を実現する具体案 Our Future Energy を発表

デンマークは、2011年9月に行われた総選挙で、野党だった社会民主党が勝利を収め、ヘレ・トーニング・シュミット氏が初の女性首相となった。新政権は、同年11月、中長期的な国家エネルギー計画である「Our Future Energy」を発表した。

 

同計画は前政権が2011年2月に発表していた「Energy Strategy 2050(エネルギー戦略2050)」を基にしている。これは、2020年までにエネルギー産業の化石燃料利用を2009年比で33%削減する短期的な目標を設定し、エネルギー総消費量に占める再生可能エネルギーのシェアを、2050年に100%を実現する方針を決めたものだ。(デンマークでは、再生可能エネルギーのシェアが1980年には約3%だったが、2004年には、14%にまで伸ばすことに成功した実績を持つ)

 

 

「Our Future Energy」では、新たな方針として、2030年までに石炭火力発電所を段階的に廃止すること、国内使用電力の50%を風力エネルギーで供給すること(それができた場合には2035年までに電気・熱を再生可能エネルギーで100%供給可能であるという試算も示した)、2020年までに温室効果ガス排出を1990年比で40%削減することなどを示した。また、石油価格が予想を超えて上昇した場合、省エネと再生可能エネルギーへの移行は、さらに大きなメリットを生み出す可能性があるとの予測も合わせて示した。

 

 

“Our Future Energy”における新政権の主な目標は以下の通り。

①   2050年に100% 再生可能エネルギーで賄う

②   2035年までに電力と熱供給は100% 再生可能エネルギーで賄う

③   2030年までに石炭を段階的廃止

④   2030年まで石油燃焼ボイラーを段階的廃止

⑤   2020年における電力消費量の半分を風力で賄う

⑥   2020年における総エネルギー消費量の36%は再生可能エネルギーで占める

⑦   2020年における運輸部門の少なくとも10%は再生可能エネルギーで占める

⑧   2020年までに温室効果ガス排出を1990年比で40%削減

 

新政権は2020年までの計画実施のためのコストとして56億クローネ(約784億円)を要求した。

 

デンマークでは、中長期のエネルギー計画については野党も含めた政党間合意を行うことが慣例となっている。しかし、この合意に向けた政党間協議においは、与野党間で激しい対立が続いてた。野党からの強い反発に応じ、新政権は当初想定していた56億クローネから46億クローネ(約644億円)に削減した。しかしながら、野党側(自由党及び保守党)は依然不十分として36億クローネ(約504億円)まで下げるよう求めた。

 

 

資料:在デンマーク日本大使館

デンマーク気候•エネルギー•建設省 プレスリリース
New Danish energy agreement: 50 % of electricity consumption from wind power in 2020 28-03-2012 

 

畑でつくる太陽光電力「ソーラーシェアリング」

太陽光発電の切り札となるか
自然エネルギーのなかで今、最も注目されているのが太陽光発電。少し前までは発電コストで風力に敵わなかったが、中国など新興国メーカーの参入で急激に価格も安くなり採算性が合うようになって来た。今年7月の「固定価格買取制度」開始で、急激に市場が拡大する可能性があるのも太陽光だ。太陽光発電は他の自然エネルギーに比べ、システムが小さくて済むため誰にでも始められる利点もあるからだ。

 

太陽光発電で最大の課題は設置場所の確保だ。現在の主流は家庭や工場、店舗などの屋根と、広大な敷地に大量の太陽光パネルを並べるメガソーラーだが、この二つだけでは日本の電力の10%が目標というレベルだ。休耕田や耕作放棄地を利用する案もあるが、これらはもともとアクセスの悪い土地が多く根本的な解決策とは言えない。

 

CHO研究所所長の長島彬氏が実証実験を続ける「ソーラーシェアリング」はこうした課題を一掃する可能性を持つ。当研究会では、千葉県市原市で行われている実証実験を取材した。

 

実証実験場に設置されている4.5キロワットの1号機。昨年の大型台風にも耐えた。

 

ソーラーシェアリングの仕組み

「ソーラーシェアリング」とは、太陽の光を農地の作物と太陽光発電とでシェアする仕組みで、2003年に長島さんが特許を出願。現在では多くの人に使ってもらいたいと無償で公開されている長島氏によれば、植物は一定量の光があれば育ち、それを超える量(光飽和点)の太陽光は植物にとってストレスとなり、成長を阻害する因子となる。多くの植物は「ブナの林の中のような明るい木漏れ日の状態」(長島氏)が望ましいのだそうだ。そこで、生育に必要な分を除いた、余剰の太陽光を発電に使うのがこの仕組みだ。具体的には、農地の上に、足場用の単管パイプを使用してフジ棚のような構造物を設け、四分の一程度の面積になるように、スリット状に太陽光パネルを設置する。実験の結果、収穫に影響はなく、作物によっては収量が増えたと言う。夏の間の水やりも減らすことができるメリットもあるそうだ。設置やメンテナンスも高所で勾配のある屋根よりずっと簡単だ。

 

ソーラーシェアリングの可能性
しかし「ソーラーシェアリング」の最も重要な点は、これが農家の新たな収入源にもなることだ。長島氏によれば、農家が農地1反(約1000平米)あたりで得られる収入は年間6~10万円程度だが、「ソーラーシェアリング」では同じ面積で100万円にもなる。つまり農家は電力料金という安定した収入を得ながら、新しい品種に取り組んだり、経営を多角化することができる。それが可能であれば、農家の後継者不足や自給率低下の解消も夢ではなくなって来る。
農地に太陽光パネルを設置すると農地として認められなくなり税金の優遇策がなくなるのではないかとの不安もあるが、長島氏が国に確認したところ、地面が耕作可能な状態であれば農地と認められ、農地転用の必要もないとのことだ。

太陽光パネルの間隔を変えて、作物の生育状況を観察している。

長島氏の計算によれば、日本で使用される電力量をすべて太陽光発電で賄うには、現在の発電効率で凡そ100万ヘクタール(100キロ四方)の農地が必要で、これをソーラーシェアリング(仮にソーラー1:農地2の割合として)で行うその3倍の面積300万ヘクタールということになる。現在、日本全体の農地は約460万ヘクタール(最盛期は約600万ヘクタールだった)なので、現状の技術でも農地だけで全ての電力を賄える計算だ。

 

この仕組みの良いところは、新たな技術的な課題がないことで、7月の固定価格買取制が実施されれば、農家が1反あたり250万円程度の設置費用を負担または借入できれば直ぐに始められることだ。

 

課題としては、対象が農地であるため、送電線がない場所では新たに設置をする必要があること。国内メーカーの家庭用太陽光パネルは、住宅の屋根での設置を前提としているため農地では保証が受けられないこと(このため、長島氏の実証2号機は中国製のパネルを使用)、また設置のための補助金は屋根に設置することを想定しているため農地は対象にならないことがある。しかし、農業への膨大な補助金を考えれば、農家の自立にもつながるこの仕組みを政策的に進める利点もあるのではないだろうか。自然エネルギーへの転換イメージが具体的に描けることも、この仕組みの魅力と言えるだろう。
(2012年3月13日)

行政職員にソーラーシャエアリングを解説する長島氏(中央)。

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