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欧州視察(ドイツ・ポーランド・フィンランド)に行ってきます。

オブリッヒハイム原発の視察に向かう橘(中央)と菅顧問ら
自然エネルギー研究会は、3/17-3/26の10日間「脱原発と自然エネルギー」に関する欧州視察に出かけます。訪問する国は、ドイツ・ポーランド・フィンランドの3カ国です。ドイツでは、ベルリンの連邦議事堂で緑の党原子力政策責任者のジルビア・コッティング・ウール議員や「環境・自然保護・原子力安全委員会」委員長のベアベル・ヘーン議員らの招聘で当会顧問の菅元首相と代表理事の橘民義らが、緑の党幹部と意見交換します。
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ドイツ連邦議会の「環境・自然保護・原子力安全委員会」の公聴会では、菅顧問が福島原発事故のことや日本の再生可能エネルギーについて報告します。また、バーテン・ビュルテンブルグ州首相(連邦参院議長)のクレッチュマン氏から招待を受けた菅顧問と代表理事の橘がBW州の首相官邸で会談。BW州太陽エネルギー・水素研究センター(ZSW)と廃炉作業中のオブリヒッヒハイム原発を視察します。
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ポーランドでは、原発建設に反対する市民団体の依頼で菅顧問がワルシャワの下院議会で開催される「エネルギーとエネルギー資源に関する特別委員会」で講演。グダニスクでは、代表理事の橘と菅顧問が商工会議所が主催する講演会に参加します。また、脱原発デモが予定されているジャルノヴィエッツ原発原発建設予定地での記者会見にも参加予定です。
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フィンランドでは、あの小泉元総理が視察して「脱原発」に舵を切ったという高レベル放射性廃棄物の最終処分施設「オンカロ(洞窟)」を視察。最後に、天然ガスを使った熱電併給施設の「ヴォサーリ発電所」を運営企業のヘルシンキンギン・エネルギアに訪ねます。視察スケジュールは以下の通りです。
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■ドイツ
3月18日(火)
ドイツ緑の党共同代表、オズデミル氏らとの会談(ベルリン:連邦議会)
ドイツ緑の党連邦議員団への講演と共同記者会見
ドイツ連邦議会「環境・自然保護・原子力安全委員長」ヘーン氏との会談
3月19日(水)
ドイツ連邦議会「環境・自然保護・原子力安全委員会」での公開ヒアリング
ハインリッヒ・ベル財団のフックス理事長らとランチミーティング&本部視察
3月20日(木)
バーテン・ビュルテンブルグ州首相クレッチュマン氏との会談
ウンターシュテラーBW州環境大臣との会談
BW州太陽エネルギー・水素研究センター(ZSW)を視察
オブリヒッヒハイム原発を視察(※2005年に廃炉作業を開始)
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■ポーランド
3月21日(金)
シェラトンホテルにて環境・再生可能エネルギー関係者との意見交換会
下院議会「エネルギーとエネルギー資源に関する特別委員会」で講演
下院議会でエネルギー特別委員長らとの記者会見
国会議員団と一般市民による公開意見交換会
ワルシャワ経済大学での講演
3月22日(土)
グダニスクのヴェイヘロヴォ市長を市庁舎に表敬訪問
ヴェイヘロヴォ市商工会議所主催の再生可能エネルギーに関する講演会
「ジャルノヴィエッツ原発」建設予定地での脱原発デモと記者会見
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■フィンランド
3月23日(日):移動日
フィンランド/ヘルシンキへ移動
3月24日(月)
「オルキルオト原発/オンカロ(高レベル放射性廃棄物最終処分場)」視察
3月25日(火)
ヘルシンキンギン・エネルギア(ヴォサーリ発電所:熱電併給施設)を視察
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ドイツ緑の党連邦議会議員ジルビアさん「脱原発・オリーブの木構想」

ドイツ緑の党ジルビアさん、橘、菅顧問
今年の12月に日本を訪れたドイツ緑の党連邦議会議員で原子力・環境政策責任者のジルビア・コッティング=ウールさん。ジルビアさんは、2011年の福島原発事故以来、現地に毎年足を運び続け、今回で4度目の来日となりました。今回の訪問では、ドイツの国会議員として、初めて東京電力福島第一原発のサイトを視察しました。また、脱原発に関わる多くの人々や日本の緑の党などと交流を持ち、最終日に当会代表理事の橘と顧問の菅直人とも意見交換の場を持ちました。

ジルビアさんとドイツ連邦共和国公使
ジルビア:日本における一連の選挙において、多くの国民が脱原発を望んでいるにも関わらず、原発推進を掲げる自民党が選挙に勝利したことを大変残念に思っています。今回、いろいろな方々とお目にかかりました。原子力市民委員会座長の船橋教授や国会事故調査委員会の黒川委員長。脱原発運動に関わってきた環境NGOの皆さん、超党派の国会議員による「原発ゼロの会」や緑の党のメンバーなどと意見交換をしました。その中で、政府の原発推進に反発する世論は、かなり強いのではという印象を持ちました。
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質問に答える橘と菅顧問
小泉元総理も最近は脱原発発言をされていると聞いています。また、環境NGOなど市民による建設的な議論がなされ、エネルギー政策の変革を目指すような動きも見られます。これらの動きはどの程度ネットワークされていますか?
菅:関係者が各団体の主催する会議にお互いに参加するなど、共通の場で議論するということはやっていますが、組織的に束ねるという機関はいまのところありません。

ドイツにはリニューアブル村が出現?
【リニューアル村の出現!?】
ジルビア:日本の脱原発を目指す緑の政治が置かれている状況は、かなり難しいということを私も承知しているつもりです。しかし、変化を起こすにはどの国においても勢力を結集すること。同じ想いの人たちをネットワーク化することが非常に重要です。ドイツにおいても「原子力ムラ」はあります。この非常に権力の強い存在に対して対抗していくには、こちら側でも力の結束、ネットワーク化というものを進めなければならない。ドイツでも大変長い時間かかりましたが、環境NGOやメディア関連、政治関連、企業関連の人たちの力を結束させることによって、再生可能エネルギー産業を急成長させることができました。いわば「リニューアル村」の出現です。原子力ムラのように財力はありませんが、関係者が力を束ねることで社会に対する相当な影響力を持つことができるということを、ドイツは経験しています。

小選挙区制度に問題がある
菅:脱原発の政治勢力を結集できない原因に、わが国の選挙制度の問題があります。特に衆議院選挙では6割ぐらいが小選挙区で比例的な選び方の要素が少ないので、原発に反対する政党がまとまれず、結果として票が割れて議席につながりませんでした。かつて、イタリアではプロディ元欧州委員長などがやった「オリーブの木」という、野党が小選挙区では候補者をひとりに絞って政権交代を実現したという成功例がありますが、まだわが国では原発に関してそういう動きは出ていません。

再生可能エネルギーへの移行を
【脱原発勢力を結集して新しい枠組みを!】ジルビア:「オリーブの木」というのは、とてもいいキーワードのように私にも思えます。そのような形で力を結束させる。あるいは「統一名簿」を作る。選挙協力をするなどのアプローチが取れれば、国会における脱原発勢力の結集にも有意義ではないかと思います。安全性を考えた際に国民にとって脱原発というのは大変重要なテーマですから。またドイツの経験から「再生可能エネルギーへの移行」は経済のためも非常に大きなチャンスを持っていますので、その辺りの力の結束ができればいいと思います。
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固定価格買い取り制度について議論
菅:わが国でも、福島原発事故の後に「固定価格買い取り制度(FIT)」を導入して、再生エネルギー産業は急速に発展しています。私が顧問を務める自然エネルギー研究会でも脱原発や自然エネルギーに関わる人たちのネットワークを作ろうとしています。我々がいまやらなくてはならないことは、多くの原発に反対する人々の声を国政の場できちんと反映できるような新しい枠組みを作ることです。それについて、ドイツ緑の党の経験を学ばせてもらいたいと思っています。また意見交換する機会を持ちましょう。ありがとうございました。

ドイツ連邦議会にて
プロフィール:ジルビア・コッティング=ウールさん。1952年生れ。2005年からドイツ緑の党連邦議会議員。気候変動や核・原子力問題など環境政策全般に関する緑の党のスポークスパーソン 。2003年に緑の党バーデン・ヴュルテンベルク州代表に就任。教育、移民や失業問題などに取組む。※みどりの1kWh(ドイツからの風に乗って)「緑の党連邦議会議員 日本滞在記の日本語訳全文 その2」
中国で1000万kW級風力発電所年内にも
新華社通信26日(毎日中国経済 8月28日)によれば、酒泉市(甘粛省)は、現在世界最大の風力発電所(550万kW:年間生産能力は300万kW)の酒泉風力発電所を増強し、年内に風力発電設備容量1000万キロワットを越える施設にするという。
同施設では、生産設備として、年3000台の風力発電機と3000セットの風力用翼板、1000メガワットの太陽電池モジュールの生産能力を備え、風力発電、太陽熱発電など新エネルギー産業の生産拠点にもなる見通しだと言う。
中国のエネルギー主管部門である国家発展改革委員会と国際エネルギー機関(IEA)が共同でまとめた「中国風力発電発展ロードマップ2050」は、2050年時点の中国の風力発電の設備容量を10億kWに拡大し、中国内の電力生産に占める風力発電の比率を現在の1%から17%に引き上げるよう提言している。
中国では、これ以外に上海郊外など7カ所で1000万kW 級の風力発電所の計画を進めている。中国は2009年に風力発電設備量で世界一になっており、これらの発電所建設で世界における風力発電設備容量で独走態勢に入る。
中国以外での1000kW級風力発電所には、London Array プロジェクト(1000万kW:建設中)、英国洋上Round3プロジェクト(2500万kW:建設中)、ドイツ洋上プロジェクト(2000万kW:計画中)の3カ所がある。
デンマーク新政権、2050に再生可能エネルギー100%を実現する具体案 Our Future Energy を発表
デンマークは、2011年9月に行われた総選挙で、野党だった社会民主党が勝利を収め、ヘレ・トーニング・シュミット氏が初の女性首相となった。新政権は、同年11月、中長期的な国家エネルギー計画である「Our Future Energy」を発表した。
同計画は前政権が2011年2月に発表していた「Energy Strategy 2050(エネルギー戦略2050)」を基にしている。これは、2020年までにエネルギー産業の化石燃料利用を2009年比で33%削減する短期的な目標を設定し、エネルギー総消費量に占める再生可能エネルギーのシェアを、2050年に100%を実現する方針を決めたものだ。(デンマークでは、再生可能エネルギーのシェアが1980年には約3%だったが、2004年には、14%にまで伸ばすことに成功した実績を持つ)
「Our Future Energy」では、新たな方針として、2030年までに石炭火力発電所を段階的に廃止すること、国内使用電力の50%を風力エネルギーで供給すること(それができた場合には2035年までに電気・熱を再生可能エネルギーで100%供給可能であるという試算も示した)、2020年までに温室効果ガス排出を1990年比で40%削減することなどを示した。また、石油価格が予想を超えて上昇した場合、省エネと再生可能エネルギーへの移行は、さらに大きなメリットを生み出す可能性があるとの予測も合わせて示した。
“Our Future Energy”における新政権の主な目標は以下の通り。
① 2050年に100% 再生可能エネルギーで賄う
② 2035年までに電力と熱供給は100% 再生可能エネルギーで賄う
③ 2030年までに石炭を段階的廃止
④ 2030年まで石油燃焼ボイラーを段階的廃止
⑤ 2020年における電力消費量の半分を風力で賄う
⑥ 2020年における総エネルギー消費量の36%は再生可能エネルギーで占める
⑦ 2020年における運輸部門の少なくとも10%は再生可能エネルギーで占める
⑧ 2020年までに温室効果ガス排出を1990年比で40%削減
新政権は2020年までの計画実施のためのコストとして56億クローネ(約784億円)を要求した。
デンマークでは、中長期のエネルギー計画については野党も含めた政党間合意を行うことが慣例となっている。しかし、この合意に向けた政党間協議においは、与野党間で激しい対立が続いてた。野党からの強い反発に応じ、新政権は当初想定していた56億クローネから46億クローネ(約644億円)に削減した。しかしながら、野党側(自由党及び保守党)は依然不十分として36億クローネ(約504億円)まで下げるよう求めた。
資料:在デンマーク日本大使館
デンマーク気候•エネルギー•建設省 プレスリリース
New Danish energy agreement: 50 % of electricity consumption from wind power in 2020 28-03-2012
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