天竜川流域で持続可能な林業に挑戦
明治維新から大正時代にかけて、生涯をかけて静岡県で天竜川の治水、植林に取り組んだ実業家、金原明善(きんぱらめいぜん)。その意志を受け継ぎ、平成22年から静岡県浜松市で持続可能な林業再生に取組む、金原治山治水財団理事長の金原利幸氏を訪ねた。

財団が運営する金原明善の生家

財団理事長の金原利幸氏
■金原氏と林業の出会い
金原氏自身は元々林業家ではなかった。半導体など電子産業や飲食業など実業の世界に生きて来た人物だ。彼が林業を始めたのは、数年前のことだ。もともと、先代から伝わる林地は、その経営を森林組合に任せていた。ところが出費ばかりで、いつになっても利益にならない。そこで、森林組合を脱退しようと組合に事務所に行ったところ、逆に経営の相談を持ちかけられ、最終的には組合の経営をして欲しいと求められた。
そこで始めて、林業経営に向き合うことになった金原氏は、日本の林業経営があまりにも非効率的であることに驚いたという。 「そもそも、林業には普通の企業なら当たり前にある、資金回収や人事管理、効率化といった発想がまるで無い。これでは行き詰まるのは当たり前だと感じました」彼は、それまで林業界の非常識とされて来た方法を敢えて取り入れた。財団が所有する1100haの森林を背景に、川上(育林、乾燥、製材)から川下(製品化、流通)までを一元管理してコストを下げ、林業生産自体も徹底的に計画化、機械化に取組んでいる。機械も中古のものを購入して自ら改良したり、整備も自前で行うなど徹底した効率化を進めている。植樹する苗も、130センチまで育てた2年物を使って、獣害(シカなどの餌になってしまう)を防ぐとともに、間伐を減らす工夫もしている。こうした努力と工夫を積み重ねて、国内シェアの8割近くを占める海外産木材のマーケットに対抗出来る製品をつくりたいと意気込む。

丸太運搬用のフォーワーダー
■自然エネルギーの導入にも取組みたい
金原氏は、自然エネルギーの利用にも関心を持つ。木材生産や、製材や加工の過程で大量に発生する木材バイオマスをボイラーに入れて、木材乾燥の熱源や電源としたり、事務所として借りた元の龍山中学横に流れる沢で小水力発電を行い、その電気を使って植物工場を運営してみたいと夢を語る。

小水力発電設備を計画する事務所横の沢
脱原発ロードマップ第一次提案を発表
民主党「脱原発を考える会」は、2012年6月27日、「脱原発ロードマップ第一次提言」を発表した。
「脱原発を考える会」は、菅直人(衆院議員=顧問)、江田五月(参院議員=顧問)、近藤昭一(衆院議員=代表)、平岡秀夫(衆院議員=事務局長)、岡崎トミ子(参院議員)、辻元清美(衆院議員)、福山哲郎(参院議員)を世話人とし、6月27日現在72名の民主党衆参国会議員が参加、賛同する任意団体。
専門家も交えて10回の会合を開き「脱原発ロードマップ第一次提言」をまとめた。「遅くとも2025年までの原発稼働の完全停止と、そのための省エネ2割、再生可能エネルギーの4割導入などを掲げる。一次提言の内容は以下の通り。
脱原発ロードマップ第一次提案
農地での太陽光発電の課題
5日は広島で農地を視察し、地主さんと一緒に現地の農業委員会を訪問しました。地主さんがご病気などが原因で農業が出来なくなり、跡を継いでくれる人も見つからない状況の中、今後の生活を支えるために農地で太陽光発電を導入出来ないかという発想で相談があったのです。
当初は、雑種地に転用するのが比較的簡単な農地という話があり、そのような認識で行ったのですが、農業委員会に行ってみると当該地は第一種農地なので原則として転用ができないということでした。「圃場整備」と言う名目で税金を投入し、機械化をしやすいように大型化した農地だったのです。「税金をつぎ込んだ優良農地なのだから、転用なんてもっての外」という訳です。でも、現在ではこうした「優良農地」でさえも、農業を続けて行けない現実があります。まして、この30年程で放棄された「優良でない」農地は数百万haに及ぶと言われています。高齢化で農業人口の急激な縮小が予測される中、こうした農地のミスマッチは、政策の大きな課題と言えそうです。
さて、農地の転用ができないなると、敷地いっぱいにソーラーパネルを並べるような太陽光発電は難しい事になります。後は、本会でも紹介した「ソーラーシェアリング」など、農地のままで太陽光パネルを置く工夫が可能かという課題になります。しかし「ソーラーシェアリング」の場合は、敷地いっぱいにソーラーパネルを並べる従来型のタイプよりも効率は悪くなってしまいます。そのため、設置を業者任せにするのではなく、骨組み部分などを農家の方々が自前で設置することによってコストを抑えるような工夫が必要です。ところが、高齢やご病気などの理由で太陽光発電を導入したい場合には、そもそも自前で設置すること自体が難しいのです。
そういう意味では、農家さんが単体で発電に取り組むだけでなく、地域で運営会社を作るなど協同して運営できる仕組みをつくる必要もありそうです。また、お役所は「前例主義」ですので、いくら優れた技術でも最初の「お墨付き」が与えられなければ、普及も難しいことになります。このあたりの条件整備も大切な仕事だとあらためて痛感しました。